警察に通報とか色々言ってましたが、東京の方ですか?

タイトルに深い意味はありません、コロコロ変わるはずでしたが、もはやずっとこのまんまかも。

格助詞をすっ飛ばすだけで、地道な努力が変態クッキングと化してしまうという世にも恐ろしい日本語怪異譚

f:id:boy2005:20190911235931j:plain
  巷で評判の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の面白さがまったく理解できなかった、ご存じ「1992年生まれ」のヤング・ボーイ大塚でございます。

 さて、思いがけぬ形で年齢詐称疑惑が単なる疑惑にすぎなかったことが証明され、することもなくなったーと思っていた矢先に、このような乙女の悲鳴が目に飛び込んでまいりましたよ。

 実に破壊力を感じる言葉ですね。なんですかこの「シコシコハンバーグ」ってのは? そして、その言葉の意味を知るまでは、寝るに寝られぬ女子ったら!

 あ、そういえば、はるはるさんとは前の日にも、とある方の手によるこんな文章の解釈について語り合っていましたっけ……。

「おかあさん」は湯船のお湯を満帆にし、そして僕が湯船に入るとお湯が溢れ出し、それはまるで昔小さい頃母親と一緒にお風呂に入ってお湯が溢れ出すのと全く同じだった


出典:「五反田の熟女デリへルと吉原の超高級ソープをハシゴした話」

  とはいえ、その内容は「湯船のお湯を満帆にし」という箇所の「満帆」というのは「満杯」の書き間違いなのでは? という、実にシンプルなものだったわけですが。

 しかし、原文を読んでいただくとおわかりになるかと思いますが、この筆者はなかなかの筆力の持ち主なんですよね。ですから、こんなイージーな間違いを犯すとは思えなくて、私は次のような解釈を唱えてみたのです。 

 おかげで、はるはるさんの私に対するイメージは地に落ちてしまったわけですが、自分ではあながちピントはずれの解釈でもないと考えております。さて、みなさんはどう思うでしょうか?

 閑話休題、「シコシコハンバーグ」に話を戻しましょう。さて、みなさんは「シコシコ」という単語から一体何を連想されますか?

 おそらく大半の男性は、自分の陰茎を利き手(ときに反対の手、あるいは他人の手)で上下に摩擦する際の擬音を連想するのではないでしょうか。そこから転じて手淫」あるいは「自慰」(一緒や!)を意味する隠語として解釈するのが自然というもの(だよね?  だよね?)。ましてや、この言葉も件の「満帆」の記事の筆者の手によるものとくれば、もうそれ以外に解釈のしようがないでしょう。

 となると、ですね。「シコシコハンバーグ」とは、ハンバーグにホモ・サピエンスの白子をぶっかけるという特殊な調理法によるヌーベル・キュイジーヌだと解釈すべきだということになります。いや、しかし! そんなことをして一体何の意味があるというのでしょうか。だってそれじゃあ、炭水化物 on 炭水化物ならぬ、タンパク質 on タンパク質じゃないですか(ってそこか!)。

 でもまあ、もしかすると風俗業界の隠語という可能性もあるので、念のためGoogleで「"シコシコハンバーグ"」と検索をしてみました。ところが、検索結果は原文の記事を含めてわずか3件しかヒットしません。この広いインターネットの世界で、検索結果が3件というのは、存在していないにも等しいレアっぷりです。

2ch.vet

 それでも念のため、原文以外の2つの検索結果にあたってみます。1つめは、2年前の匿名掲示板のスレッドで、おそらくプロ野球の実況板だと思われます。問題の箇所は「ヤクルト勝ちそうやな安心したわ ワイも今日はぐっすりシコシコハンバーグや」という記述なのですが、これだけでは今ひとつ意味が掴めません。

 素直に読めば「贔屓の球団が勝ちそうなので、今夜はハンバーグを食べて寝るとしよう」と取れなくもないのですが、なぜハンバーグの前に「シコシコ」だの「ぐっすり」だのって物騒な言葉がくるのでしょう? それに、ぐっすりする前のシコシコとくればやはり…嗚呼!

jbbs.shitaraba.net

 気を取り直して、2つめの検索結果もチェックします。こちらも別の匿名掲示板のスレッドでしたが、こちらはなんと10年も前のものでした。「シコシコハンバーグ」の歴史は意外に長いのかも知れません。でも、そうだとするとGoogleの検索結果が3件しかないというのは、ちょっと腑に落ちません。日本に潜入した北朝鮮工作員へ向けての暗号にしては悪目立ちが過ぎますし……。

 手がかりのまったくない状況に、早くも迷宮入りの予感すら漂い始めてきますが、よく考えたら私はそもそも原文にまったく目を通していないことに気が付きました。「シコシコハンバーグ」という甘美なる響きにすっかり踊らされた私は、「捜査は必ず現場での聞き込みから始まる」という鉄則を忘れていたようです。そこで、慌てて原文を頭から読んでみることにしました。

僕はフライングガーデンでシコシコハンバーグを運んだお金で風俗代を今まで全て出してきた。

6時間のバイトを終えたあと、「あ、今の仕事でピンサロ1回分なんだな」とかいつも考えてしまう。6時間あくせく働いて、それが30分のピンクサロンに消えてしまうのだ。いや、逆に考えるのだ。6時間働けば、ピンサロに行ける。たった6時間、つまり1時間を6回過ごすだけで、ピンクサロンで射精できるのだ。

出典:「日暮里のレンタルルームで僕は楊貴妃に恋に落ちた」

  やはり、現場には謎を解くための大きな手がかりがありましたね。なんですかこのフライングガーデンという聞きなれない単語は? 売れないバンド名みたいな響きもあるので、おそらくは固有名詞でしょう。Googleで検索すると、いの一番に同名のハンバーグレストランチェーンのサイトがヒットしたではないですか(この会社、SEO対策は万全の模様)。点が線になった瞬間です。

www.fgarden.co.jp

 早速サイトにアクセスしてみると、「爆弾ハンバーグ」という看板商品の響きこそ物騒ではありますが、見た目はいたって健全な佇まいの、家族揃って楽しめる明るいレストランという印象です。この店の厨房に、陰茎を上下に摩擦した末にハンバーグにザーメンをぶっかけるような、異端の調理法など存在するはずがありません。

 ということで、ここでの「ハンバーグ」が極めて健全なる飲食チェーン「フライングガーデン」の極上ハンバーグだと特定できた時点で、最有力であったはずの「シコシコ=自慰」説には完全なるアリバイが成立したことになります。では、真犯人はどこにいるのでしょう……?

 次なる手がかりは、本文中の「シコシコハンバーグ」の後にある「6時間あくせく働いて」という記述。うーん、もしかして我々は「シコシコ」というカタカナ表記に印象操作されてはいないでしょうか?(って、私だけか!)

 ていうか、ちゃんと辞書を引くと「しこしこ」ってどんな意味なんでしたっけ?

しこしこ

 
( 副 ) スル
 弾力があって、かむと歯ごたえのあるさま。 「 -(と)した歯ざわり」
 持続的に、地道にするさま。 「 -(と)書きためた原稿」

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

  やっぱり「しこしこ」には陰茎を摩擦する擬音以外にも意味がありましたよ〜。例えば①の意味であれば「(しこしこと)歯ごたえのあるハンバーグ」となりますね! ただ、ハンバーグという料理は、歯ごたえがあるよりもむしろ柔らかいほうが魅力だと思うので、これはこれでなんだか違う気がします。

 では②の意味ではどうでしょう。「持続的なハンバーグ」とか「地道なハンバーグ」って、サッパリ意味がわかりませんね。いやいや、違うんですってば! ②の場合は「シコシコ」がかかるのは「ハンバーグ」ではなくて「運んだ」のほうなんです! つまりはこういうことだったのです。

僕はフライングガーデン地道にこつこつとハンバーグを運び続け、そうして稼いだお金で風俗代を今まで全て出してきた。

 仮にここまで丁寧に書かずとも、原文が「シコシコとハンバーグを」としていれば、おそらく問題はなかったのです。あるいは「しこしこハンバーグを」とするだけでも印象はかなり変わっていたでしょう(「フライングガーデン」が「ガスト」とか「ステーキのくいしんぼ」でも変わっていたかも知れませんが、それは事実の問題であって言語の問題ではありません…)。

 たかが「と」一文字の違いなのに、格助詞があるか無いだけで「北関東が誇る美味しいハンバーグ」「地道に働く姿」「変態の食い物」かの如く誤解されてしまうという恐ろしさ。日本語とは表現の幅が広いだけに解釈の幅も広い、斯くも恐ろしい言語だったというわけです(ホントかよ!?)。

 ということで、これにてめでたく一件落着なのですが、私が日頃から他人の誤字や脱字にうるさい理由が、みなさんにもおわかりいただけたのではないでしょうか。油断していると明日の変態シェフは、貴方かも知れませんよ……。