電動シェーバーを購入した大塚です。先日、思いがけない臨時収入があり(クラウドファンディングではありません)、天気の良い日曜日にビックカメラで家電で購入して、庶民のささやかな喜びに浸ってみたわけです。
さまざまなメーカーがある中で選んだのは、父が愛用しているブラウン。凝り性の父が長年愛用しているドイツのブランドに、私は幼いころから憧れていました。
上位機種の売りである、浴室での使用や、丸洗い可という機能には、正直あまりピンと来なかったのですが、下位機種は本体が中国製ということもあり、ドイツ製の上位機種を選ぶことにしました。
すると、売り場の店員さんが寄ってきました。
「お客さん、その機種をお買い求めなら、消耗品も合わせて買うと5000円のキャッシュバックが受けられますよ!」
それまでは冷やかしの若僧だと思って無視を決め込んでいたのに、私が上位機種を買いそうな見込み客だとわかった瞬間に掌返しです。
「どうせ、その消耗品が5000円以上するんでしょ?」
それでも5000円お得なのは間違いないけれど、買う必要もない物に出費するという感覚が嫌だったので、正直そのキャンペーンにあまり心を動かされませんでした。すると店員さんは、私の胸中を察したのか、さらにこうたたみかけてきます。
「確かに替刃などは高価ですけど、1000円のクリーナーなら、差し引きでも4000円はお得です」
気がつくと私は、電動シェーバーとクリーナーを持って、レジの列に並んでいました。さて、私はこの会計の段階で5000円がキャッシュバックされると思っていたのですが、どうやらそうではないようでした。商品の箱にあるバーコードとレシートを所定の用紙に貼って、ブラウンのキャンペーン事務局に郵送しなければいけないとのこと。デジタル時代に相応しくない、実に面倒なアナログ方式のキャンペーンであることに愕然としました。
ただ、それでもやはりお金は欲しいですから、帰宅するなり申し込み用紙にバーコードとレシートを貼り、必要事項をペンで記入していきました。すると、メールアドレス記入欄の上に「フリガナ」という四文字を発見しました。文章ではわかりにくいと思いますが、つまりはこういうことです。
otsuka@ostuka.com
例えば上のようなメールアドレスがあったとします、このメールアドレスにカタカナで「オーティーエスケーエー@オーティーエスケーエー.シーオーエム」とフリガナを振るということなのです。これが実際に手書きでやると案外と難しい。頭の中では「オーティーエスケーエー」なのに、油断すると「オーティーSケーA……ああ、間違えた!」という具合に、ついアルファベットを書いてしまうのです。
ボケ防止の頭の体操のような作業に7度ぐらい失敗し、心が折れそうになった私ですけれど、やはりお金は欲しいので頑張って記入を完了させました。あとは用紙を折りたたんで、糊付けして、郵便ポストに投函すればOKかな、と思ったら表面のどこにも宛先が記載されておりません。別紙の応募要項に目を通すと「バーコートとレシートを貼った用紙を封筒に入れ、切手を貼ってご応募ください」とあります。
今やeメール(死語)が主流の時代ですよ、ミニマリストの家どころか、一般家庭にも封筒なんてあるはずないでしょうに……。仕方なくコンビニエンスストアに足を運んで封筒と切手を購入し、宛先を書こうとペンを手にすると、さらによもやの展開が私を待ち構えていました。宛名のキャンペーン事務局の名称が、落語の「寿限無」のように長んです。長い、長すぎる。そして、恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
〒100-8692
日本郵便(株)銀座郵便局 郵便私書箱718号
ブラウン「消耗品と同時購入で、最大5,000円キャッシュバックキャンペーン」係
ブラウンの担当者はきっと、本音ではキャンペーンに応募して欲しくないんだと思います。大の大人が封筒に「消耗品と同時購入で、最大5,000円キャッシュバックキャンペーン」係など、平静を保ちつつ書けると思うのでしょうか?
でも、ここまできたら私も退くわけにはいきません。笑いで震える手と恥ずかしさに堪え、ブラウン「消耗品と同時購入で、最大5,000円キャッシュバックキャンペーン」係御中、と封筒に大書して差し上げました。そして、夜陰に乗じて近所の郵便ポストに投函し自宅に戻るや、そのやり場のない怒りと羞恥心を文章にまとめたわけなのです。
すると、少し心は落ち着きました。さて、4000円は何に使おうかな。