警察に通報とか色々言ってましたが、東京の方ですか?

タイトルに深い意味はありません、コロコロ変わるはずでしたが、もはやずっとこのまんまかも。

サンガーノ・クロニクル 3 〜商業的成功と挫折、そしてインフルエンサー〜

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▲画家に転身した2017年10月の1ヵ月間だけで描かれた作品たち(一部)。

■思いがけぬ早期の商業的成功がもたらしたもの

 サンガーノ、自由と優しさを求め続けた自己愛の画家。技術や技巧に頼らない本能だけのアート「新自由表現主義」の旗手は、どこからやって来て、そしてどこへと向かうのだろうか。サンガーノの芸術の本質に迫る本稿、第三回は商業的な側面から、サンガーノと界隈インフルエンサーの関係について論じてみる。

■止まらぬ制作の依頼

 画家としてわずか4日目にして、作品が3万円で売れたサンガーノ。これは決してビギナーズラックなどではなかった。その証拠に3日後には馬の絵が3万円で、そしてさらに4日後にはオオカミの絵が、やはり3万円で売れたという記録が当時のブログに残っている。

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▲本人曰く「髪の乱れ方に疾走感があって、目に生命力を感じるのですごく気に入った作品」

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▲黒猫の絵を見た依頼者のオファーによって制作されたオオカミ。

 これらの作品はいずれも、ブロガー時代のファンからの依頼に応じて描き下ろしたもののようである。初めて売れたトナカイの絵もそうであったが、当時は既成の作品ではなく、依頼者のリクエストに応じる形で新作を描いて売ることのほうが一般的だったようだ。

 11日間で3つの作品が、合計9万円で売れたという嘘のような出来事が、サンガーノはよほど嬉しかったのだろう。当時のブログで「自らの絵には3万円の価値がある」と高らかに宣言している。

ぼくの絵が初めて3万円で売れた時「宮森はやとを甘やかすな」というアンチの声を目にしました。たしかに、他ならぬぼく自身もたった1度売れただけでは「3万円の価値は無い」と思います。

ですが、今回「3回連続で3万円で絵が売れたこと」で、その価値観は変貌を遂げました。

三人寄れば文殊の知恵、仏の顔も三度、早起きは三文の徳、三日三晩と古来から3という数字はとても意味のあるモノとして扱われています。

 また、一度のホームランは誰もが打てる可能性がありますが、2回連続となると滅多にできません。

 それが3回連続となれば余程の実力がなければ無理なことなのです。

というわけで、「ぼくの絵には3万円の価値がある」と自信を持っていいんじゃないかと今は感じています。

旧ブログ「画家開始11日!宮森はやとの絵が3度目の3万円で売れた件」より

 さらにこの数日後、今度は大物ブロガーのやまもとりゅうけんから、やはり3万円で龍の絵の依頼を受ける。この時点で「サンガーノ作品は1点3万円」という市場相場が完成に出来上がったと言えよう。

■史上最高傑作で勝負をかける

 ラッパーから画家に転身し1ヵ月、気がつくとサンガーノは26点もの作品を描き上げていた。そして、さらなる高みを目指すためにブログで再び宣言するのである。

宮森はやと史上最高の絵を描くことに挑戦します。

絵の依頼をくださったみなさん以外にも、ぼくの創作活動にエールを送ってくださった方がたくさんいました。 

そんな多くのみなさんの支えによって、まだ短い期間ですがぼくは画家として活動できていると思っています。

というわけで、そんなみなさんの気持ちを背に受けて、これから「今までの自分の中で一番最高の絵を描くこと」に挑戦します。

何をもって最高かは分りにくい部分ですが、ぼくは「自分の作品を通して人の気持ちをザワつかせたり、勇気づけたりできたらいいな」と思いながらずっと創作しています。

なので「誰が観ても生命力の溢れた絵」に挑戦したいと思います。

誰が観ても恐ろしい生命力のある絵を描いてみたい。

旧ブログ「ラッパーを2ヶ月で辞め、画家になって1ヶ月が経ちました」より

サンガーノ史上最高」を目指して挑戦した野心作。それが本稿第一回のメインビジュアルにもなっている「孤独に打ち克ったトラ」である。

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▲「孤独に打ち克ったトラ」はブログで最初にアップされた際、画像に右のようなぼかし加工がされていたので、筆者は当初「simon game」の絵がモチーフなのだと勘違いをしていた。

 前章でも書いたように、虎はサンガーノにとって個の強さの象徴であると同時に、画家である自身を投影した分身でもあった。

 だが、他の虎の絵と見比べてもらうと一目瞭然であるように、この時代のサンガーノの虎にしては珍しく、不安や恐れといったネガティブな要素はまったくない。それどころか「例外的かつ圧倒的に力強い」ことがわかる。

 これは画家に転向後1ヵ月で26作品を描き上げ、12万円もの大金を手に入れた達成感、高揚感がそのまま絵に表れたものだと考えられる。そしてサンガーノは、この画家としての記念碑ともいえる作品を「3万1円以上」という条件で、自らの意思によって売りに出すのであった。

 これまでに売れた4作は、いずれも買い手からの「指し値」での売買であったが、今回は売り手であるサンガーノから「最低価格条」という条件付きでの売買を求めた。それにはおそらく、自身最高傑作を売りに出すことで、1点3万円という、早くも固定しかかった市場での評価をさらに釣り上げようという狙いがあったに違いない。

■まだ孤独に打ち克てていなかった虎

 ところが、本人の思惑とは裏腹に、史上最高傑作に買い手が現れることはなかった。購入申し込みの締め切りが、本人のブログでの発表から24時間以内ということで、周知が徹底されなかったせいもあるが、仲間内をターゲットにしたやり口が少し露骨過ぎたのかも知れない。当のサンガーノとしては、最低でも5万円ぐらいの値が付くと予想していたようで、この結果はかなりショックであった。

 ちなみに、この「孤独に打ち克ったトラ」は、買い手がつかなかったことから、「孤独と戦い続けるトラ」と改題される。そのきっかけとなったタロット占い師・中川龍の作品評が実に秀逸なので、ここで紹介してみたい。

 もっとも、タイトルの違いだけで作品が売れたとは到底考えづらいのだが、当時のサンガーノの下心をズバリと見抜いている。アーティストとしては基本エゴイストなサンガーノが、素直に他者のアドバイスを受け入れたのも、それが相当に図星だったからだろう。

■心がザワザワするヤギ

  ここで勢いが止まるかと思われたサンガーノの創作活動だが、捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったもので、史上最高作が不発に終わった10日後に、またもや作品の依頼が舞い込んできたのである。

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▲混沌とした背景の雰囲気が、抽象画時代の到来が近いことを予見させる。

 完成した「自分の内側と葛藤するヤギ」という名の作品は、サンガーノの知人であると同時に、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの界隈系インフルエンサーとして知られていた八木仁平。

 これまで描かれてきた、野性的で生命力に溢れる動物の絵とは趣がまったく異なり、トランプのジョーカーのような擬人化されたヤギが、どこか妖しげに微笑みかける絵。依頼人の八木をして「心がザワザワするヤギ」と言わしめたこの作品には、なんとこれまでの相場である3万円を大きく超える10万39円という破格の値がつけられるのだった。

■「野生の時代」から「インフルエンサー」の時代へーー

 それに味をしめたというわけではないだろうが、以後のサンガーノは動物からインフルエンサーをモチーフにした実験的な作風へと大きくシフトチェンジしていく。

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▲作品名「けんすう」(左)と作品名「けんすうという概念」(右)

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▲作品名「はあちゅうは声を上げる社会を作るために権力と闘った」

  これらインフルエンサーをモチーフとした作品の評価は、残念ながら「野生の時代」のそれとは足元にも及ばない散々なもので、ネット上ではアンチを中心に容赦ない酷評に晒された。

 確かに「けんすう」シリーズの2作は、既存のけんすうキャラを勝手にアレンジしただけのものでしかなく、アンチからパクリの誹りを免れないものであったし、「はあちゅうは声を上げる社会〜」も、サンガーノ自身のme too問題に対する感情がまるで伝わってこない、気の抜けたサイダーのような作品であったことは確かである。

■憧れの人からの思いがけぬエール

 メッセージをオリジナリティある表現で伝えることの難しさに初めて直面し、画家として初めて苦悩するサンガーノ。ところが、そんな作品を唯一認めた人物がいたのである。その人物とはなんと、あのイケダハヤトだった。イケダは作品「けんすう」について、twitterで次のように評している。

 イケダが反応したことで、はあちゅうも自分をテーマにした作品に「いいね」をするという相乗効果もあった。画家を志す以前から尊敬の念を抱いていたイケダのエールに感激したサンガーノは、自らの意思でイケダのために作品を描き、それを買ってもらおうと思いつく。

 しかし、どんなアートを創ればあのイケダハヤトに満足してもらえるのだろうか。考えれば考えるほど、サンガーノは泥沼に陥り、隘路へとはまり込んでいく。以下は、作品制作時に苦しみと興奮のあまりつぶやいた、サンガーノ本人のツイートである。

 それでも、どうにか納得のいく作品を完成させたサンガーノは、作品を抱えて高知行きの深夜バスに乗りイケダの元へと急いだ。ちなみに高知行きの事実をこの時まだイケダ本人には知らされていなかったというーー。

 イケダの私有地であるイケハヤランドで、久々にイケダと対面したサンガーノは、その場で思い切って作品の購入を迫った。当時、仮想通貨バブルで絶頂の極みにあったイケダは、即決で10万円の値をつけたという。見事、交渉の成立である。ちなみにサンガーノがイケダに向けて描いた作品のモチーフは、まさにその「仮想通貨」だったのだ。

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▲仮想通貨をモチーフにした作品は、芸術にありがちな普遍的なものを対象としたのではなく、極めて時事的なものを対象にしたことが評価されたという。

※文中敬称略